ご挨拶

ご 挨 拶

 蔵王連峰を背景に白石川越しに、佐藤屋の黒い板塀の続く風景は老舗の風格と、大河原町の宿場町として賑わいを見せた時代の一端がかいま見られます。
 また、仙南随一の素封家としての風格を持つ、薬医門と店蔵、門から玄関までの通路は日本庭園の雰囲気をかもし出し、玄関屋根は唐破風様式、更に貴賓室は葉山にある西園寺公望別荘と全く同じ造りになっています。

 

 佐藤屋邸の歴史的、文化的価値について見直しするとともに活用について考えようと、平成23年1月に大河原町文化財保護委員長の及川義行先生が町民有志に呼びかけ「佐藤屋邸の活用を考える会」を発足。その後「佐藤屋プロジェクト」と改名し、毎月定例会を開催し会員の意思疎通を図りながら目的に向って活動しております。

 

 東日本大震災で一時中断しましたが、及川義行先生が町内の旧家に何度も足を運んだ結集の成果として、同年11月に「震災によって再確認された町内旧家の【書画・工芸品・古文書】展」を開催したところ、予想を超える来観者でした。

 

 その後、春には「雛まつり」、一目千本桜のまつりには「お休み処」として、秋には町内の文化人、芸術家の作品、残された遺品等々をテーマにした「企画展」を定例化し開催。町内外の方々から佐藤屋邸と展示品の素晴らしさを見ていただいております。
 また、会員も発足当時は9名でしたが今は22名となり、会員同士の歴史・文化的なことを深めるため近隣及び県外の遺産を視察し研鑽に励んでおります。

 

 大河原町齋清志町長はじめ各関係者の皆様方のご支援で、昨年「国登録有形文化財」に登録されました。会員も一層の研鑽を重ね、「佐藤家住宅」から町内外の文化的遺産を見直して発信して行きたいと考えております。
 皆さん方のご支援とご協力をお願い致します。

 

佐藤屋プロジェクト  

文化財の価値と活用

 どの町にも言えることだが、現在の町の繁栄は先人の業績の上にあることは誰もが知ることである。大河原町の佐藤源三郎翁もその一人である。江戸期からの醸造業と大地主で財を成し、それを学校や駅、郵便局、寺や神社等の公共物に私財を投じて町の発展を支えてきた。佐藤屋邸を今に残したのも業績の一つであると言えよう。明治から昭和の建物は奥州街道の風格を今に伝える町唯一の建物である。

 

 母屋を例にその価値の高さを見てみよう。30を越す部屋は居間と客間とに分けられ、居間は家族の生活の場として機能し、客間はそれこそ賛を尽くす迄にもてなしの作りになっている。一つひとつの部屋は空間の美と機能が調和して一つとして同じ部屋はない。それは、綴密な設計と最高級の材料、そして一級の匠の技によって形づくられているのである。

 

 薬医門から玄関までの通路や三つの中庭は、どれも母屋と調和していて見るものの心を和ませる落ち着きと風格があり、日本庭園の粋を成していると思わせる程のものである。

 

 見学に訪れる人の中には、造作の素晴らしさを隅々までカメラにおさめたり、手で触って材質の素晴らしさにため息を漏らす人は少なくない。建築業界関係者の一人は、これだけの建物は今ではとても出来るものではない。建築に携わる者として学ぶべきものも多く、是非後世に残して欲しいと話している。それらは、国登録有形文化財としての価値の高さを認める所以でもある。

 

 このような遺産の価値に目を向けて保護すると共に、さらなる町の文化の向上と発展にどのように活用するかを考え、実行するのが、今に生きる私達の役目なのである。

 

令和元年4月記               

大河原町文化財保護委員長 及川 義行  

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